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新教程 日本陸軍暗号 伊藤秀美・保坂廣志

新教程 日本陸軍暗号 米陸軍通信保安部編

伊藤秀美・保坂廣志 訳 A5版 172ページ
  ダウンロード版   700円   DL-Market  Google  
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新教程

 米陸軍通信保安部の暗号解読課は第二次大戦時2,500余名の人員を擁し、その8割強が日本陸軍の暗号の解読に従事していた。 そこで使用された新人向けの解読のための教科書 (A New Course in Japanese Army Systems) の翻訳。日本陸軍の暗号システムのどこに弱点を見出だし、どう攻略したかが具体的に書かれている。暗号解読をめぐる攻防のポイントと米軍の暗号解読組織・情報に関する解説を付けた。

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訳者序

 旧日本軍の暗号に関して,海軍暗号は敵に解読されたが陸軍暗号は安泰だったという説がある.残念ながら米英側の対日暗号解読に関する資料が公開されるにおよび,この説は誤りであることが明らかとなった.その解読作業の概要は,すでに米英の関係者により紹介されているが,これらの単行本から陸軍暗号のどこに問題があったかを的確に知ることは必ずしも容易ではない.

 ここでは,陸軍暗号の問題点を探るための資料として,米陸軍の通信保安部 (SSA Signal Security Agency) が新人教育用に用いた教程本をとりあげる.米陸軍中枢部の暗号解読組織は,太平洋戦争中 SIA,SIS を経て SSA となり終戦まで続いた.この組織は戦後直ぐに NSA (National Security Agency) に改組している.組織の要員は,1941年に300名程度だったものが戦争末期の1945年6月には約1万人に増大している.因みに本教程を作成した暗号解読部は,SSAの8部中最大で,1944年7月時点で要員2,500余名を擁し,その8割強が日本陸軍暗号と取り組んでいた.

 本教程は,陸軍暗号の概要を記した後に,どこに弱点があるかを指摘し,それを攻略する方法を詳細に記している.解読実務にこれから携わる人を対象にしているため,方法論が身につくように分かりやすく書かれている点,実戦的な演習問題が付けられている点に特色がある.本教程を読むに数学的に高度な知識は必要ではなく,むしろ,パズル解析の勘や忍耐力,常識などが求められよう.全体は12章で,理由は不明であるが,応用テクニックを扱った後半の8から12章が欠落している.しかし,陸軍暗号の問題点を探るという目的にはそれほど障碍にはならないと思われる.

 太平洋戦争開戦時,日本陸軍暗号は有利な状況にあった.米英の関心が外交暗号と海軍暗号に向けられており,陸軍暗号は手付かずの状態だったからである.開戦時のリードは1年半保つことが出来,米英軍は1943年6月まで暗号解読による情報を得ることができなかった.この後,主要暗号が攻略される.最初に解読されたのは船舶暗号である.また,船舶暗号と類似の構造を持つ航空暗号もほぼ同時期に解読された.陸軍中枢の暗号も1943年9月頃には部分的に解読され,翌年1月には暗号書が敵手に落ちたこともあり,大規模に解読されるに至った.本教程が取り扱っている内容は時期的にはこのあたりまでである.なお,読者の理解を助けるために,暗号解読をめぐる攻防のポイントと米軍の暗号解読組織・情報に関する解説をつけたので,適宜参照されたい.

 原資料は1997年7月に保坂が米国立公文書館で発見したものである.これが地元放送局に伝わり、東京キー局と協同で暗号に関する特集番組を作ることとなった.東京サイドで一次翻訳をし,保坂が修正を行い最初の翻訳が出来た.番組では沖縄戦に関する暗号のみがとりあげられ,翻訳全体は日の目を見ることなくそのままとなっていた.今般,紫峰出版の戦争記録シリーズで旧日本軍の暗号関係の資料を取り上げることとなり,その中の一巻として刊行することとした.翻訳は伊藤が技術的な点検を行ない,また演習問題の解答をつけるなど全面的に改稿した.

もくじ

訳者序
本書のガイド
まえがき
第1章 暗号
第2章 乱数はぎ取りの基本原理
第3章 指示符の暗号化
第4章 2468系の暗号解析
第5章 組立表の復元-7890系
第6章 組立表の列座標の復元-7890系
第7章 鍵を解く-7890系
補 注
略 解
参考文献
解 説
第1章 暗号戦 - 攻防のポイント
 1.1 はじめに
 1.2 日本陸軍の暗号システム
 1.3 特別計算表
 1.4 解読
第2章 第二次世界大戦下,米軍のインテリジェンス
 2.1 はじめに
 2.2 米情報部の編成
 2.3 米情報部暗号解読
  2.3.1 米陸軍情報部マジック
  2.3.2 米海軍情報部オレンジ
  2.3.3 サム・インテリジェンス・ノ-ト
  2.3.4 SSO (Special Security Officer =特別情報保全将校)
  2.3.5 陸軍通信学校
 2.4 終わりに

訳者紹介

  伊藤秀美 (いとう ひでみ)
   1950年 三重県生まれ
   1973年 東北大学理学部物理学科卒業
   1978年 京都大学大学院博士課程中退 理論物理学専攻
   防災関係の仕事の傍ら戦史を研究
   著書 検証『ある神話の背景』(2012, 紫峰出版)
       船舶団長の那覇帰還行(2012, 紫峰出版)
       陸軍 暗号教範(2013,紫峰出版,共編)

  保坂廣志(ほさか ひろし)
   1949年 北海道生まれ
   1974年 東洋大学社会学部応用社会学科卒業
   1976年 東洋大学大学院社会学修士課程修了
   琉球大学法文学部講師、助教授、教授を歴任
   現在、沖縄戦関係を中心とした翻訳業に従事
   著書 戦争動員とジャ-ナリズム(1991, ひるぎ社)
       争点・沖縄戦の記憶(2002, 社会評論社, 共著)
       日本軍の暗号作戦 (2012, 紫峰出版)
       陸軍 暗号教範(2013,紫峰出版,共編)

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