通俗と学術の間                                      

そこまで言って委員会 横山裕道

そこまで言って委員会NP 読売テレビ
近代史耕助のフェイク事件簿スペシャル
2020/2/23放送

前半で、虹(にじ)を使った地震予知の謎解きが近代史耕助なる人物の手で行われる。予知手法の発案者である椋平(むくひら)広吉氏の名が冠された椋平虹は、若狭湾の上の決まった場所にフッと現れるといい、この虹の微妙な位置、色の濃さ、継続時間などから地震が予知できると椋平氏は主張していた。

一躍注目を浴びたのは、1930年11月26日に伊豆半島北部で発生した北伊豆地震M7.3の予知に成功したことによる。この地震は丹那断層がずれ動いたことにより発生した典型的な内陸直下型の地震で、死者272名、負傷者572名、全壊2165戸、半壊5516戸、焼失75戸という大きな被害を出した。

椋平氏は地震発生の前日の正午過ぎ、椋平虹に関心を示していた京都帝大理学部長石野又吉博士に宛てて電報「アスアサ四ジイヅジシンアルムクヒラ」を打った。地震は4時2分に発生したから、非常に正確に当てたことになる。

椋平氏はこれ以外にも予知に成功したとしており、知人に宛てた予知内容を記した葉書がその証拠であった。この葉書にトリックがあることを暴いたのが当時毎日新聞社会部記者で、『さまよえる地震予知』の著者である横山裕道氏である。

後半は、そこまで言って委員会のレギュラーメンバー他にゲストの横山裕道氏を加えた討論である。

議長 辛坊治郎
秘書 黒木千晶(TVアナウンサー)
ゲスト 横山裕道

委員 竹田恒泰(作家)、門田隆将(作家・ジャーナリスト)、本村健太郎(弁護士)、山口真由(ニューヨーク州弁護士)、大野裕之(日本チャップリン協会会長)、ロバートゲラー(東大名誉教授)、上山明博(ノンフィクション作家)、竹中平蔵(東洋大教授)

黒木:このコーナーのゲストは毎日新聞記者時代から地震予知の歴史をつぶさに見続けてこられた科学・環境ジャーナリストの横山裕道さんです。
よろしくお願いします。

辛坊:今のVTRによると横山さんが見抜いたんですか。

横山:そうです。

黒木:椋平虹を。

辛坊:おいくつでした?

横山:32歳、31歳です。

辛坊:ほう、そうですか。ははー、なんでそこに興味を持たれて追求されてたんですか。

横山:ええ、地震を担当しててですね。椋平さんという人が新聞にどんどん出てくるわけです。また予知をしたと。それで、私が毎日新聞の社会部にいて、当時の社会部長がそんなことができるはずがないから、トリックを暴いてこいと言われて行ったわけです。

辛坊:本人に当てて書いたら本人の反応は?

横山:本人は、私はその時に、本人にはこういうトリックでしょうとは言わなかった。言っても多分本当のことは言わないはずで。それで、2、3日経って東京本社の方は社会面のトップだったんですが、大阪の方はなかなか使いきれないわけです。なぜかというと大阪の話で椋平さんは地震を予知したというのに東京からやってきた変な記者が暴くのはというような意識があったんだと思うんです。

辛坊:横山さんが日本の地震予知における最大の疑問と書かれているのはこれです。
「科学的根拠の全くない地震予測を出し続け一部メディアが大々的に取り上げること」

横山:ある教授がお金儲けに使っているんですね。会社を組織して地震予測情報を売っているわけです。月額200円とか。5万人の会員がいるんですよ。

辛坊:毎月200円ですか。

横山:そうです。

辛坊:5万人ということは毎月1000万円はいってくる。1年で1億2000万。

山口:辛坊さんの年俸とどっちが高いの。

辛坊:私のほうがずっとリーズナブルです。(笑)

辛坊:はがきのトリックを。きっかけは何だったんですか。

横山:きっかけはなかなか難しかったんですが、郵便局に最後行ったんですね。そうしたところ、局長と局員が2人が応対してくれまして、普通に話をしていたら局長が席を外したんですね。局長がいなくなると局員のひとりが即座に葉書というのは自分宛てに出せるんですよと言ったんですね。それで私はなるほどと思いました。

黒木:ということは郵便局の方はもう薄々気づいていらした。

横山:その通りです。ただし、当時公務員ですよね。それから信書の秘密もあるし、本当のこと言えないわけですよね。そこで局員のひとりがそう言ってくれて、月に数回地震観測書と称する薄い鉛筆書きの葉書を自分宛てに送っています、と。これで、大丈夫だ、謎が解けたと思って私がまたその足で椋平さんに会いに行って、予知した証拠の葉書を見せてくださいと。4通くらい見たんです。全部消しゴムで消したような跡があった。

辛坊:結局、最初の電報の謎は解けずですか。

横山:電報の謎はまだ残っていると思います。ただ、当時伊豆では群発地震が起こっていたんですね。だから、どんどんどんどん地震が起こっている。で彼のは「明日朝四時伊豆地震ある」だけです。それをやったら当たるんです。規模を言わなければ当たるんですよ、大体は。ただし、難しいのはたまたまマグニチュードが大きなものがあったわけですね。私もなんで大規模な地震が起こると書かなかったのと聞いたら、石野さんという当時の京大の理学部長が場所と時間を言ってくれればいいよ、規模はいいよと言われたと云うんです。そんなはずはないよと思うんですね。だから、私はまだ謎はあるけれども、それもカラクリというか本当の予知ではない。

黒木:横山さんに伺いたいんですけど、ここで地震が起きるというのは無理だと国が認めているとして、そしたら今出ている何十年後に何十%起きるというあれは何なんですか。

横山:ゲラーさんは全面否定ですね。私は全面否定はできないと。南海トラフ地震の30年間における確率が70~80%というのはちょっと変だなという声は上がっています。つまり防災ということを意識して少し高く出そうというようなことが行われたんじゃないかという指摘があるんですね。

ゲラー:東海と南海が危ないと2008年に政府が言って、東北はほとんど真っ白だけど、起きたのは東北ですよ。東京は危ない、熊本は安全だと政府が言った。しかし、熊本が起きた。何の役にも立たない。むしろ日本は地震国であり、いつでもどこでも不意打ちに遭う、政府はそれだけ言えばより役に立つのではないか。

辛坊:これ公開されてみんななんと思うか。自分が住んでいるところは安全だと思い込む材料になっちゃう。だから、これを出すことに何の意味があるんだという話。

大野:なんで出しているかって、それに基づいて今何でも耐震性だ、耐震性だということで貴重な建物が壊されたり、あるいはなんというか不要不急の工事がされたりということがあって、耐震性というのがすごくマジックワードになっていると思うんですよね。それで、なんというかフェイクな公共事業の隠れ蓑になっているんじゃないかと僕は思うんです。

ゲラー:実にもっとひどい話があって、実はこの地図(全国地震動予測地図)を作るための地震調査研究は100億円以上毎年、地震の御用学者が、

横山:ゲラーさん御用地震学者はやめましょうよ。

ゲラー:すべての彼らの観測研究はこの地図を作るためのものとなって...(音声消去)

横山:ちょっと言いすぎじゃないですか。

竹田:動物が地震を感ずるというのがよく映像がでてくるんですけど、実際東日本大震災の2,3日前に大量のイカが水揚げされたと。要するに海底に住んでいるイカがなんか異変を感じて、やばいと言って地震を予知して上のほうに来たら全部釣られてしまって、地震は予知できたけれども、釣られちゃうことは予知できなかった。(笑)動物は予知できるんではないですか。

ゲラー:悪いけどあれは前兆現象ではなくて前兆幻想(イルージョン)です。つまり後出しジャンケンみたいなもので地震が起きてからそういえばあのうちのワンちゃんは変な...(笑)あの類のものにすぎませんよ。

黒木:あの、竹中さんに伺いたいのですけれど、政権の中枢にいらっしゃった竹中さんからして、地震予知にそれほどの予算が割かれているというのはどう思われますか。

竹中:ええっと、これはさっき辛坊さんがこんなことやっても無駄じゃないかっておっしゃったんですけど、じゃあ政府が何もやらなかったら一体メディアや国民がなんて言いますかねということだと思いますけど。だって、一方で地方で困っている交通弱者のおじいさんおばあさんがいるからその道路をちゃんと整備してくれ、そういう声も国民からあるわけで。私はそういう意味で地震にある程度の予算をこれからも割いていかなければならないと。ただ、言われたように(地震動予測地図上の色が)黄色だから安心だと思うなと。

辛坊:心理学的には正常性バイアスというね、自分のところは大丈夫だという根拠に人間はどうしても使いがちだという。でやっぱり今ここで大きな地震があるよという今ここで作っているとんでもない防潮堤、土台の幅が100メートル、高さが15メートルみたいなものを、ここでこう埋め尽くしているものをこっちでもやろうというような話になっているんだけど、地震の予測に使われているのは100億かもしれないけど、そのデータをもとに本当にいるかいらないかわからないような公共事業に金を使うための根拠になっちゃってる構図があるわけで。

竹中:とんでもない防波堤を作っている例があって。東北地方であの時倒れちゃってるわけだから、どんなに強いもの作ったって倒れるときは倒れるということですよね。

黒木:私たちがいつどこで地震が起きるかわからないという覚悟を決めておくということが大切ですよね。

辛坊:地震の話題で99.9%のキャスターがこうやって締めるんです。(笑)

黒木:おあとがよろしいようで。

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