保坂廣志 沖縄戦捕虜の証言 琉球新報
生き抜いた兵士の肉声 (琉球新報 2015年11月9日)
米国立公文書館が所蔵する沖縄戦捕虜尋問調書850人分の中から、他府県出身の兵士、県出身兵に加え、朝鮮出身の兵士の証言を翻訳し、収録した。
沖縄戦を体験した兵士の肉声を記録した尋問調書について著者は「第一次資料の中でも傑出した沖縄戦体験の証言なのは間違いないであろう」(序文)と記す。
激しい地上戦から生き延び米軍に捕らわれた捕虜は、尋問に対し、自らの戦場体験を生々しく語っている。特に朝鮮半島出身者の捕虜の調書には「戦場下で朝鮮人兵士や軍夫に強いた日本兵の偏見・差別」が記録されている。本書全体から捕虜たちの「肉声」が伝わってくる。
本書には「針穴から戦場を穿つ」という副題がある。尋問調書を通じて九死に一生を得て針穴のような戦場から這い出た捕虜たちの声を著者は聞いた。
「今新たに戦場の針穴からの証言に寄り添い、針穴を穿ち、生存者は何を訴えたか知りたいものである」(序文)という著者の意思によって本書は成立した。